この記事で分かること
- 汎用の生成AIが、役所の仕事で使われなかった理由
- 西海市が用途ごとにAIを分け、全職員に届けた方法
- 自社の文章仕事で、まず何を書き出せばいいか
改善の結果
年2,072時間削減
文章づくりにかかる業務時間
出典が示すのは、試験運用2か月の時点で全庁アンケートにより確認された年間の削減効果だけです。1件あたりの作業時間の前後は公表されていないため、前後の比較は載せていません。
試験運用2か月でログイン率57%
本記事は、各社が公開している導入事例・公開情報をもとに、マクセラスが独自の視点で業務改善の考え方を分析したものです。マクセラスが導入を担当した事例ではありません。
この記事の目次
01Before ─ 課題
汎用の生成AIは、なぜ役所で使われなかったのか
長崎県西海市は、人材不足が迫るなかで、無理なく続けられる自治体運営を目指して業務の見直しを進めてきました。その一環として、最初は一般向けの生成AIを導入しています。
ところが、議会の答弁書のように市の業務に特化した回答は、そのAIでは作れませんでした。職員が自治体の仕事で使いこなせないまま、活用が広がらなかったと説明されています。
マクセラスの解釈
役所の文章仕事の多くは、一から書くことより、過去の答弁や議事録といった手元の材料を形にすることです。市の材料を知らないAIには、その下ごしらえを任せきれなかったと当社は見ています。
02How ─ 変えたこと
市の材料を学んだAIを、用途ごとに7つ用意した
次に選んだのは、自治体向けの生成AIサービス「ばりぐっどくん」です。西海市が公開してきた過去の情報を追加で学ばせられるため、市の業務に合った答えを返せます。
使い道ごとに入口を分け、7つのAIを用意しました。議会答弁の原稿、汎用の相談、要約、翻訳、音声の文字起こし、紙の書類の文字起こし、そして文字起こしを議事録の体裁に整えるものです。
土台には kintone を選び、全庁の基盤にしました。答弁書なら、質問を入れてボタンを押すと、過去の議事録などをもとに回答の案が返ります。職員はそれを画面上で直し、コメント欄で他部署と相談できます。接続は LGWAN-ASP を経由させ、自治体の環境で安全に使える形にしています。
利用者は、総務省の調査でいう一般行政部門の職員数以上です。試験運用の段階で全庁アンケートを取り、使われ方と効果を確かめています。
マクセラスの解釈
工夫の中心は、汎用のAIをそのまま配るのをやめ、市の材料を学んだ用途別の入口を、全員が使う画面に置いたことだと当社は読んでいます。
業務の流れの前後
- 01汎用の生成AI
- 02答弁に合わない
- 03職員が使いこなせない
3工程。タブで変えたあとと見比べられます。
BEFORE
- 01汎用の生成AI
- 02答弁に合わない
- 03職員が使いこなせない
AFTER
- 01用途別のAIを選ぶ
- 02質問や材料を入れる
- 03AIが案を返す
- 04職員が直す
- 05他部署と相談する
出典に書かれている役割の分け方
機械に任せたこと
- 過去の議事録などをもとにした答弁の回答案づくり
- 要約と翻訳
- 音声・紙の書類の文字起こし
- 文字起こしを議事録の体裁に整える
人に残したこと
- 回答案を直す
- AIが返した内容を、職員が kintone の画面で編集します。
- 他部署との相談
- コメント欄を使って情報を共有し、議論します。
03After ─ 結果
2か月で、使われ方と効果を数字にした
試験運用を始めて2か月後の全庁アンケートでは、57%の職員がログインしていました。7つのAIの効果を合わせると、年間2,072時間の業務削減効果が確認されています。
約9割の職員が有効性を実感したと答え、部署や役職を問わず利用が広がっていることも分かりました。
数字の出どころ
サイボウズが2024年12月20日に発表した長崎県西海市の取り組みによる数値です。削減時間は、試験運用開始から2か月で行った全庁アンケートで確認された年間の効果で、7つのAIの合算です。全庁導入の基盤として kintone を採用したと説明されています。
数字についての問い
- 年2,072時間は、1年間かけて測った数字ですか?
- いいえ。試験運用から2か月の時点のアンケートで確認された「年間の効果」です。どう計算したかや、1件あたりの時間は公表されていません。
04自社への応用
自社の文章仕事にも、同じ形はないか
ここからは、出典の事実をもとにしたマクセラスの解釈と提案です。
この事例の要は、汎用のAIを配るだけで終わらせず、自分たちの過去の材料を学ばせ、用途ごとの入口を作ったことです。文章の下ごしらえは、どの会社にもあります。
- 営業
- 商談メモを報告書の形に整える
- 管理部門
- 会議の音声から議事録を起こす
- 広報・採用
- 同じ内容を媒体ごとに書き分ける
- 現場のリーダー
- 日報や連絡事項を毎日まとめている
まず何を調べるか
まず2週間、文章を書いた場面を「何を材料にしたか」と一緒に書き出してください。過去の回答・議事録・規程など、同じ材料を何度も探して使っているなら、そこが用途別のAIを作る最初の候補です。汎用のAIを配るだけでは、その材料に届きません。
あなたの会社なら、何時間か
1人1日10分の短縮でも、人数を掛けると大きくなります。対象人数を広めに入れてください。
マクセラスの解釈
AIは、自社の材料に届いて初めて使われる。
汎用のAIを配っても、自社の過去の回答や議事録を知らなければ、下書きは使われません。私たちはまず、どの文章がどの材料から作られているかを洗い出します。
05まとめ
まとめと参考資料
- 汎用の生成AIは、答弁書のような市の業務に合う答えを出せず、職員に使われなかった
- 市の過去の公開情報を学ぶAIを用途別に7つ用意し、全庁の kintone から使える形にした
- 自社では、文章を書く場面と、そのとき使う材料を書き出すところから始める
参考資料
- 西海市、kintone×生成AIを全庁導入 年間2,000時間以上の業務削減を達成サイボウズ・2026-10-11 確認原文を見る ↗
掲載している数値は、各出典が公開している報告値です。当社が測定したものではありません。 図や表は、出典が公開している事実をもとに当社が独自に作成しており、出典の図版は使用していません。
本記事は、各社が公開している導入事例・公開情報をもとに、マクセラスが独自の視点で業務改善の考え方を分析したものです。マクセラスが導入を担当した事例ではありません。

