この記事で分かること
- 確認作業のどこを機械に任せ、どこを人に残したのか
- AIを入れる前に、郡山市が整えた2つのこと
- 自社の確認作業で、まず何を数えればいいか
改善前 → 改善後
40分
調査票1件の確認(平均)
5分
AIが指摘した箇所だけを確認
担当職員の残業(月平均)は約43時間から13時間へ
本記事は、各社が公開している導入事例・公開情報をもとに、マクセラスが独自の視点で業務改善の考え方を分析したものです。マクセラスが導入を担当した事例ではありません。
この記事の目次
01Before ─ 課題
なぜ調査票1件の確認に時間がかかったのか
要介護認定では、市区町村が訪問調査から審査・判定までの事務を担います。調査の結果をまとめる「認定調査票」は、概況調査・基本調査・特記事項からなり、質問は全体で74の項目にわたります。
郡山市では、基本調査の選択式の回答と、自由記述の特記事項とのあいだに矛盾がないかを、職員が1枚ずつ目で読み合わせていました。介護度の判定に大きく響く大事な確認ですが、項目が多く、調査員ごとの手書きの癖もあって、正確に読み取るだけで時間がかかっていました。
申請は2023年度で1万7,261件あります。デジタル化の前の2018年度には、担当職員の残業が市の職員全体の約4倍になっていました。
02How ─ 変えたこと
AIの前に、業務の棚卸しと書式を変えた
最初にしたのは業務の棚卸しです。認定係の職員全員に業務の内容・工程・量を聞き取って全業務を書き出し、4つの段階に整理して、デジタルにすべき業務と人が処理したほうが効率的な業務を分けました。
次に、調査票の書式を変えました。手書きや差し込み印字で作っていた調査票を直接入力できる PDF にし、データで取り込める形にしています。AI がデータで判断できるようにするためです。
そのうえで、文章を読み取る AI が基本調査と特記事項の食い違いを洗い出し、自動で指摘する仕組みを入れました。職員は、指摘された箇所だけを確かめます。仕組みは認定係の元係長の発案で、多くの企業に断られたのち実証を経て製品化されました。
一方、訪問調査の場でタブレットに入力する案は見送りました。74項目を聞き取りながらの操作は難しく、紙にメモして持ち帰るほうがスムーズだと判断したためです。
マクセラスの解釈
確認をなくしたのではなく、人が読む範囲を絞った事例です。担当者は「AI の精度が80%でも、残り20%を人間が担保すれば効率化できる」と語っています。機械に完璧を求めず、人が最後に見る前提にしたことが導入を現実的にした、と当社は読んでいます。
業務の流れの前後
- 01調査票が届く
- 0274項目を目視
- 03不整合を探す
- 04判断する
- 05審査会へ
5工程。タブで変えたあとと見比べられます。
BEFORE
- 01調査票が届く
- 0274項目を目視
- 03不整合を探す
- 04判断する
- 05審査会へ
AFTER
- 01データで取り込む
- 02AIが不整合を指摘
- 03指摘箇所だけ見る
- 04職員が判断する
- 05審査会へ
出典に書かれている役割の分け方
機械に任せたこと
- 基本調査と特記事項の食い違いを洗い出して指摘する
人に残したこと
- 指摘箇所の確認
- 職員が、AI が指摘した箇所だけを目で確かめます。
- 訪問調査の記録
- 紙にメモして持ち帰り、あとで入力する今の流れを残しました。
03After ─ 結果
確認は1件5分に。残業と処理日数も減った
指摘された箇所だけを確かめる形にしたことで、調査票1件の確認は平均40分程度から約5分になりました。職員による見落としや、経験年数による判断のばらつきも減ったとされています。
- 担当職員の残業(月平均)
- 約43時間 → 13時間
- 申請から判定までの日数
- 平均45.1日 → 35.7日
- 年間の申請件数
- 1万7,261件(2023年度)
数字の出どころ
数値はデジタル庁が公開した郡山市の取り組みによるものです。残業はデジタル化前の2018年度と後の2021年度の比較で、その後は2022年度16時間、2023年度13時間です。処理日数も2018年度と2021年度の比較で、国の標準処理期間は30日です。
数字についての問い
- 残業や日数が減ったのは、AI の確認だけの効果ですか?
- いいえ。出典は、申請や審査会のオンライン化を含むデジタル化の前と後として比べています。確認作業だけの効果は切り分けられていません。
04自社への応用
自社の確認作業にも、同じ形はないか
ここからは、出典の事実をもとにしたマクセラスの解釈と提案です。
「全部に目を通さないと不安」な確認は、どの会社にもあります。共通しているのは、食い違いがあるのは一部の書類だけだということです。
- 経理・請求書チェック
- 全件を目で照合する。差異があるのは一部だけ
- 品質検査の報告書
- 規格から外れた値を探すために全ページを読む
- 契約書のレビュー
- 毎回ひな形と読み比べる。変わっているのは数か所
- 受発注の入力確認
- 注文書と入力内容を突き合わせる。ほとんどは一致している
まず何を調べるか
まず1か月、確認した件数と、実際に食い違いが見つかった件数を記録してください。見つかる率が1割を切っていれば、全件を人が読む形を見直す余地があります。1件の確認が長い作業なら、月20件ほどでも時間は積み上がります。あわせて、確認する書類を手書きではなくデータで受け取れるかも見ておくと、次の一手を決めやすくなります。
あなたの会社なら、何時間か
確認は1件が短いぶん、件数で積み上がります。まず1か月の件数を数えてください。
マクセラスの解釈
「確認をなくす」ではなく「見る範囲を狭める」。
私たちはまず「その確認で実際に何件はじかれているか」を数えます。はじかれる率が低いほど、範囲を狭める効果は大きくなります。
05まとめ
まとめと参考資料
- 確認が重かったのは、選択式の回答と自由記述の食い違いを、職員が1件ずつ読み合わせていたから
- AI の前に業務の棚卸しと書式の変更を行い、AI が指摘した箇所だけを人が見る形にした
- 自社では、確認した件数と食い違いが見つかった件数を1か月数えるところから始める
参考資料
- 要介護認定事務の効率化はこう進める:郡山市に学ぶ、業務の棚卸しからAI導入までデジタル庁・2026-10-11 確認原文を見る ↗
掲載している数値は、各出典が公開している報告値です。当社が測定したものではありません。 図や表は、出典が公開している事実をもとに当社が独自に作成しており、出典の図版は使用していません。
本記事は、各社が公開している導入事例・公開情報をもとに、マクセラスが独自の視点で業務改善の考え方を分析したものです。マクセラスが導入を担当した事例ではありません。

