クラウドセキュリティの基本




クラウドセキュリティの基本:暗号化・権限管理・バックアップの仕組みをわかりやすく解説

「クラウドは便利だけど、セキュリティが不安」──多くの製造業から聞こえる声です。
本記事では、クラウドを安全に使うための三本柱「暗号化」「権限管理」「バックアップ/DR」を中心に、図面・ノウハウ・見積原価といった機微情報を守る要点を整理します。
さらに、ゼロトラスト・監査ログ・共有責任モデルなど、近年の基本概念もコンパクトに解説します。

まず全体像:何を守り、何で守る?

製造業クラウドの守る対象は、図面・CAD/CAMデータ・加工条件・治工具設計・見積原価など。
これらは流出リスク(外部)破損/喪失リスク(内部/災害)の両方に晒されます。対策のコアは次の三本柱です。

  • 暗号化:盗まれても読めない状態にする(保存時/転送時)
  • 権限管理:見られる人を必要最小限に絞る(最小権限・MFA・SSO)
  • バックアップ/DR:壊れても元に戻せる(世代管理・多拠点・復旧訓練)

1. 暗号化:保存時と転送時を標準でガード

保存時(At-Rest)暗号化

  • クラウドのストレージは通常AES-256などで自動暗号化。
  • 鍵はKMS(鍵管理サービス)で分離管理し、操作ログを保全。
  • 鍵の自動ローテーション(例:90日)とアクセス審査を実施。

転送時(In-Transit)暗号化

  • TLS 1.2+で通信を保護、HSTSやPFSにより盗聴耐性を向上。
  • 外部共有リンクは有効期限/ワンタイムで短命化。
Maxelusの想定設定(書き換え可)
  • 保存時:AES-256自動暗号化
  • 鍵:KMS+ローテーション90日、管理者二名承認
  • 転送時:TLS 1.2/1.3、HSTS有効

2. 権限管理:最小権限と多要素で“人”を守る

セキュリティ事故の多くはアカウントや設定が入口です。権限設計は「付与しないこと」が基本。

最小権限(Least Privilege)

  • RBAC/ABAC:役割/属性ベースで粒度の細かいアクセス。
  • プロジェクト・顧客単位でフォルダ分離、横断権限を最小化。
  • ゲスト共有は閲覧のみ+ダウンロード禁止+期限つき。

MFA・SSO・端末制御

  • MFA必須化(TOTP/認証アプリ、SMSより推奨)。
  • SSO(SAML/OIDC)でアカウント一元管理と強制ポリシー。
  • IP許可/端末認証(会社VPNや登録端末のみ)。

権限の棚卸し

  • 異動・退職にあわせた即日無効化
  • 定期レビュー(例:四半期)で不要権限の除去

3. バックアップ/DR:消えても戻せる設計

ランサムウェアや誤削除、災害に対する最後の砦がバックアップとDR(災害復旧)です。

世代管理とスナップショット

  • 自動バージョニングで過去時点にロールバック。
  • 変更不可(WORM)領域でバックアップを保護。

多拠点冗長・RPO/RTO

  • 別リージョン/別ゾーンへ複製し、災害耐性を確保。
  • RPO/RTO(目標復旧点/時間)を明文化し、契約・運用に反映。

復旧訓練

  • 年1〜2回のリストア演習で実効性を検証。
  • 演習で得た復旧時間を次回のRTO改善に反映。

+α:ゼロトラスト・監査ログ・マルウェア対策

  • ゼロトラスト:境界に頼らず、接続のたびにユーザー/端末/状況を検証。
  • 監査ログ:閲覧/DL/設定変更の記録を長期保管、SIEM等で可視化。
  • 異常検知:大量DL・国外IP・深夜アクセスのアラート。
  • マルウェア対策:アップロード時スキャン、隔離フロー、再発防止。
  • コンプライアンス:ISO/IEC 27001、SOC等の外部監査(取得状況は明記)。

共有責任モデル:どこまでがベンダー、どこからが自社?

クラウドでは、基盤の安全性はベンダーが、設定と運用は利用者が担います。
例:基盤のパッチ・物理セキュリティ=ベンダー/権限設計・ゲスト共有・ログ監視=自社。

導入・運用チェックリスト

  • 保存時/転送時の暗号化は標準?鍵はKMSで分離?
  • MFA必須SSOIP/端末制限を適用できる?
  • 最小権限が設計でき、棚卸しは定期化されている?
  • 世代管理/スナップショットと別リージョン複製は?
  • RPO/RTOが文書化され、復旧訓練を実施している?
  • 監査ログは誰が、どれだけ保管し、どう監視する?
  • ゼロトラストの考え方(ユーザー/端末/状況の再検証)を運用に落とし込んだ?
  • 共有責任の役割分担(自社/ベンダー)が明文化されている?

よくある質問

Q1. 自社サーバーのままでも大丈夫?

十分な人員と予算で継続的にパッチ・監視・DRを回せるなら可。ただしクラウドは標準機能と自動化で高水準を維持しやすいのが強みです。

Q2. 協力会社との共有が心配です。

閲覧のみ・DL禁止・有効期限・透かし・IP制限・MFAなどで安全にコントロール可能。ログで追跡できるのも利点。

Q3. ランサムウェア対策は?

端末側が被害に遭っても、クラウドのバージョニング/スナップショット別リージョン複製で復旧可能。アップロードスキャンや異常検知と併用します。

Q4. データの所在は日本にできますか?

多くのクラウドで国内データセンター選択が可能(契約/プランに依存)。取引先要件に合わせて選定します。

まとめと次のアクション

クラウドを安全に使う鍵は、暗号化・権限管理・バックアップ/DRの型を最初に決め、運用を習慣化すること。

※本記事は一般的な解説です。各機能の提供状況やSLAはクラウド/プランにより異なります。導入時は要件と契約内容をご確認ください。